Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
五
ちょうど、地獄の邏卒が列を作っているのと変りはない。
牢人たちは、牢人たちのみで、一団にかたまって、武蔵が逃げないように包囲しながら見物しようという計画らしく、中には、げらげら笑っている者がある。
けれど、その手数は不要だった。彼らは、居どころに立ったまま、自然な鶴翼の陣形を作っていればそれでよかった。敵の武蔵に、すこしも、逃げたり、狼狽したりする様子がないからである。
武蔵は歩いている。
それも極めて、一足一足、粘る土でも踏んでいるように、やわらかな若草の崖を、少しずつ、しかし――いつ鷲のごとく飛ぶかも知れない姿勢をもちながら、眼にあまる人数の前へ――というよりは死地へ――近づいて来るのであった。
五
――来るぞっ。
もう口に出していう者はない。
けれど、徐々に、片手に剣をさげた武蔵の姿が、沛雨をつつんだ一朶の黒雲のように、敵の心へ、やがて降りかかるものを、恐怖させていたことは慥かである。
「…………」
不気味な一瞬の静けさは、双方が死を考える瞬間であるのだ。武蔵の顔はまったく蒼白になっている。死神の眼が、彼の顔を借りて、
(――どれから先に)
と、窺っているかのような光になっている。