Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
四
(――手ごわい)
四高弟のほうも、今は武蔵の認識をまったく革めて、誰ひとりとして、味方の四の数をたよっている者はなかった。この際、数を恃んで、毛ほどでも弛みを見せれば武蔵の刀は、きッとそこへ斬りこんでくる。
(――世の中には、いそうもない人間が、やはりいるものだ)
柳生流の骨子をとって、庄田真流の真理を体得したという庄田喜左衛門も、ただ、
(ふしぎな人間)
として、敵の武蔵を、剣の先から見澄ましているだけだった。彼にさえ、まだ一尺の攻撃もなし得なかった。
剣も人も、大地も空も、そうして氷に化してしまうかと思われた一瞬、思いがけない音響が、武蔵の聴覚をハッとおどろかせた。
誰がふくのか、笛の音だった。そう距離もないらしい本丸の林を通って、冴えた音が風に運ばれて来るのであった。
四
笛。――高鳴る笛の音。だれだ、ふくのは。
われもなく敵もなく、生死の妄念もまったく滅して、ただ一剣の権化となりきっていた武蔵は、その耳の穴から、計らざる音律の曲者にしのび込まれて、途端に、われに返ってしまった、肉体と妄念のわれに戻ってしまった。
なぜならば、音は、彼の脳裡に、肉体のあるかぎりは忘れ得ないであろうほどふかく記憶に烙きついているはずであった。