Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme

Aozora Bunko

名利も名聞もない人に打ち勝って何の名利になる? 名聞になる?

「アア。もしこの聯の詩がなかったら、おれは、石舟斎からよい笑われ者に見られるところだった」

陽がやや高くなったせいか、鶯の声も、夜明けほどはしなくなった。

――と、門のうちの遠い坂の上から、ぽたぽたと迅い跫音が聞えて来た。跫音におどろいて立つ小禽のつばさが、八方に、小さな虹を描く。

「あっ?」

狼狽した色が武蔵の顔を横ぎった。垣の隙間からその人の姿がわかった。――門内の坂を駈けおりて来たのは若い女なのである。

「……お通だ」

ゆうべの笛の音を武蔵は思い出した。咄嗟に、みだれた心のうちで、

(会おうか。会うまいか)

彼は迷うのであった。

会いたい! と思う。

また、会ってはならぬ! と思う。

烈しい動悸が、武蔵の胸をあらしみたいに翔けまわった。彼は、意気地のない、殊に、女には弱い――一個の青春の男でしかなかった。

「……ど、どうしよう?」

まだ、心が決まらないのだ。その間に、山荘の方から坂道を駈けおりて来たお通は、すぐそこまで来て、

「あらっ?」

足を止めた。

後を振顧った。

そして何となく今朝は、欣びごとでもあるらしい生々した眸を、彼方此方へやって、