Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
「ま……」
「これならいいだろう」
「村の人が笑いますよ」
「なんと笑う?」
「離れて歩いてください」
「うそをいえ、男と並んで歩くのは好きなくせに」
「知らない!」
お通は先へ駈け出してしまう。沢庵は、雪山から降りてきた釈尊のように、風呂敷のすそを翩翻と風にふかせながら、後ろから歩いて来るのであった。
「アハハハ、怒ったのかい、お通さん、怒るなよ、そんなにふくれた顔すると、恋人にきらわれるぞ」
村から四、五町ほど下流の英田川の河原には、撩乱と春の草花がさいていた。お通は、負い籠をそこにおろして、蝶の群れにかこまれながら、もうそこらの花の根に、鎌の先をうごかしている――
「平和だなあ」
青年沢庵は、若くして多感な――そして宗教家らしい詠嘆を洩らしてその側に立った。お通が、せっせと花を刈っている仕事には手伝おうともしないのである。
「……お通さん、おまえの今の姿は、平和そのものだよ。人間は誰でも、こうして、万華の浄土に生を楽しんでいられるものを、好んで泣き、好んで悩み、愛慾と修羅の坩堝へ、われから墜ちて行って、八寒十熱の炎に身を焦かなければ気がすまない。……お通さんだけは、そうさせたくないものだな」