Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme

Aozora Bunko

「まあ、ひどい」

「一切の理由が、そこで、分ったよ。……お通さん、あのことは、むしろ其女にとっては倖せじゃないか」

「どうしてです?」

「又八のようなむら気な男じゃもの、女房になってから、あんな去り状を投げつけられたらどうするぞ。まだお互いに、そうならないうちだから、わしは却って、欣びたい」

「女には、そのような考え方はできないのです」

「じゃあ、どう考えているのか」

「口惜しくッて! ……」

不意に、しゅくっと、自分の袖口へ噛みついて、

「……屹度、きっと、わたしは又八さんをさがし出して、思うさまのことをいってやらなければ、この胸がおさまりません。そして、お甲とかいう女にも」

沢庵は、そういって、無念そうに泣きじゃくるお通の横顔を見つめながら、

「始まったのう……」

と、何のことかつぶやいた。

「――お通さんだけは、世間の悪も人間の表裏も知らずに、娘となり、おかみさんとなり、やがては婆さんとなって、無憂華の潔い生涯を結ぶ人かと思ったら、やはり其女にも、そろそろ運命のあらい風が吹いて来たらしい」

「沢庵さん! ……。わ、わたし、どうしましょう! ……口惜しい……口惜しい」