Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme

Aozora Bunko

「あれでも生きているのじゃろうか? ……」

とお杉婆は、皺の中の針のような眼を眩しげに、千年杉の梢に向けて、

「雑巾のように貼りついたまま、身うごきもしていぬが」

「鴉が、あの顔へたからぬところを見れば、武蔵は、まだ生きているに違いなかろうで」

「大きに――」

お杉はうなずきながら、奥を覗いて、

「嫁が見えぬが、呼んでおくれぬか」

「嫁とは」

「うちのお通じゃ」

「あれはまだ本位田家の嫁ではあるまいが」

「近いうち、嫁にする」

「聟のいない家へ、嫁をむかえて誰が添うのか」

「おぬし、風来坊のくせに、よけいな心配はせぬものよ。お通は、どこにいますかいの」

「たぶん、寝ておるじゃろう」

「アアそうか……」

独り合点して――

「夜は、武蔵の見張をしておれとわしが吩咐けたゆえ昼間は眠たいも道理……。沢庵どの、昼間の見張は、おぬしの役じゃぞ」

お杉は、千年杉の下へ行って、しばらく仰向いていたが、やがてこつこつと桑の杖をついて里へ降りて行った。

沢庵は、部屋へ入ると、晩まで顔を見せなかった。里の子が上がって来て、千年杉の梢へ石を投げた時、障子をあけて、

「洟たれッ! 何をするかっ」

と一度、大声で叱ったきり、その障子は、終日閉まっていた。