Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
「さ、昼間になったら、油断は出来ませんよ。それに、すぐ国境にかかりますから」
国境と聞くと武蔵の眼は、急に、爛として、
「そうだ、おれはこれから日名倉の木戸へ行く」
「え? ……日名倉へですって」
「あそこの山牢には、姉上が捕まっている。姉上を助け出して行くから、お通さんとは、ここで別れよう」
「…………」
お通は、うらめしげに、武蔵の顔を黙って見ていたが、やがて、
「あなたは、そんな気なんですか。ここでもう別れてしまうくらいなら、私は、宮本村を出ては参りません」
「だって、為方がない」
「武蔵さん」
お通は、詰め寄るような眼ざしをもって、彼の手へ、自分の手を触れかけたが、顔も体も、熱くなって、ただ情熱にふるえるだけだった。
「わたしの気持、今に、ゆっくり話しますけれど、ここでお別れするのは嫌です。どこへでも、連れて行って下さい」
「……でも」
「後生です」
とお通は手をついて、
「――あなたが嫌だといっても、私は離れません。もし、お吟さまを救い出すのに、私がいて足手まといなら、私は、姫路の御城下まで先に行って待っていますから」
「じゃあ……」
と武蔵はもう起ちかけた。