Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
「暗いのう、権叔父」
「待たっしゃれ」
土足のまま、炉のそばへ来た。そしてひとつかみの柴を燻べて、その明りに、
「あっ……おらぬぞ。ばば」
「えっ?」
――だが、お杉はすぐ、流し元の戸が少し開いているのを見つけ、
「外じゃ」
と、さけんだ。
その顔へ、ざっと、水の入っている水柄杓を投げつけた者がある、お通だった、風の中の鳥のように、途端に、袂も裳も翻して、茶屋前の坂道を、真っ逆さまに、逃げ走って行く――
「畜生っ」
お杉は軒下まで駈け出して、
「権叔父よっ、何しているのじゃ」
「逃げたか!」
「逃げたかもないものよ、こなたが間抜けゆえ、覚られてしもうたのじゃわ。――あれっ、はよう、どうかせぬかいの」
「あれか」
黒く――坂の下をまるで鹿のように逃げてゆく影をのぞんで、
「大事ない、先は病人、それに程の知れた女子の脚、追いついて、一討ちに」
駈け出すと、お杉も、後から駈けつづいて、
「権叔父よ、一太刀浴びせるはよいが、首は婆が怨みをいってから斬りますぞい」
そのうちに、先を走っている権六が、
「しまった」
大声を放って振向いた。
「どうしたぞ」
「この竹谷へじゃ――」
「躍りこんだか」