Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme

Aozora Bunko

「いいえ! いいえ! そうはいわせません」

闘うように、お通は迫って、武蔵の体を、花田橋の欄干へ押しつけた。

「千年杉の上で、私があなたの縄目を切る時にもいいました。――一緒に逃げてくれますかと」

「離せ、おい、人が見る」

「見たって、かまいません。――その時、私の救いをうけてくれますかといったら、あなたは歓喜の声をあげ、オオ、断ってくれこの縄目を断ってくれ! 二度までも、そう叫んだではありませんか」

理をもって責めてはいるが、涙でいっぱいな彼女の眼は、ただ情熱のたぎりであった。

武蔵は、理においても、返す言葉がなかったし、情熱においては、なおさら焦き立てられて、自分の眼まで熱いものになってしまった。

「……お離し……昼間だ、往来の人が振り向いてゆくじゃないか」

「…………」

お通は素直に袂をはなした。そして橋の欄干へ俯ッ伏すと、鬢をふるわせてしゅくしゅくと泣き出した。

「……すみません、つい、はしたないことをいいました。恩着せがましい今のことば、忘れてください」

「お通どの」

欄干の顔をさしのぞいて、

「実は、わしは今日まで、九百幾十日の間――そなたがここでわしを待っていた間――あの白鷺城の天守閣のうえに、陽の目も見ずに籠っていたのだ」