Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
――弟子たちのお幇間や妓たちのそういう声が、甘い毒のように、彼の心を酔わしていた。
すると、一軒の茶屋から、
「あれ、四条の若先生、いけませんよ、顔をかくしても、わかっておりますよ」
と、妓が、黄いろい声でさけんだ。
清十郎は、得意な気もちをかくし、わざと驚いたように、
「藤次、どうしてあの妓は、わしを吉岡の嫡子と知っているのだろう」
と、その格子先で佇んだ。
「はてな?」
藤次は、格子のうちで笑っている白い顔と、清十郎を見くらべて、
「諸公、怪しからぬ事なござるぞよ」
「なんじゃ、何事ぞや」
連中は、わざと騒めく。
藤次は遊蕩の気分を醸るために、道化た手ぶりをして、
「初心じゃとばかり思っていたら、うちの若先生は、どうして隅へはおけない。――あの妓と、とうにお馴染であるらしい」
指さすと、妓は、
「あれ、それは嘘」
清十郎も、大げさに、
「何を申すか、わしは、この家など上がったことはない」
真面目になって、弁解するのを、藤次は、百も承知していながら、
「では、なぜ、笠で顔をかくしているあなたを、四条の若先生と、あの妓がいいあてたか、不審では、ござりませぬか。――諸公、これが不審でないと思われるか」