Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
彼は、坂を登りきった。
千手堂とか、悲願院とか、その辺りの棟を一巡して、武蔵は、
(故郷に独りいる姉上の息災をまもらせたまえ)
と祈り、
(鈍愚武蔵に、苦難を与えたまえ、われに、死を与えたもうか、われに天下一の剣を与えたまえ)
と、祈った。
神、仏を礼拝した後は、何かすがすがと洗ったような心になることを、彼は沢庵から無言に教えられ、その後、書物による知識のうらづけも持っていた。
崖のふちに、笠を捨てる。笠のそばへ腰を投げた。
京洛中は、ここから一望だった。膝を抱いている身のそばには、土筆があたまをそろえていた。
(偉大な生命になりたい)
単純な野望が、武蔵の若い胸を膨らませた。
(人間と生れたからには――)
うららかな春のそこここを歩いている参詣人や遊山の客とは、およそ遠い夢を武蔵はそこで描いているのだった。
天慶の昔――つくり話にちがいないが――平の将門と藤原純友というどっちも野放しの悍馬みたいな野望家が、成功したら日本を半分わけにしようと語り合ったとかいう伝説を――彼は何かの書物で見た時は、その無智無謀が、よほどおかしく感じられたものだが、今の自分にも、笑えない気がした。