Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
「何処にじゃ」
「相手は」
と、刀の柄に湿りをくれながら、人垣を割って入った。
駕かき達は、
「ご隠居、相手はこちらでござります」
「お急ぎなさいますなよ」
「なかなか、敵は、しぶとい面をしておりますぜ」
「十分、お支度なすッて」
と、寄り集って、案じたり、宥わったりする。
見ている人々は驚いた。
「あのお婆さんが、あの若い男へ、果し合いをしようというんでしょうか」
「そうらしいが……」
「助太刀も、よぼよぼしている。何か理があるんでしょうな」
「あるんでしょうよ」
「あれ、何か、連れの者へ怒ッていますぜ。きかない気の老婆もあるものだ」
お杉ばばは今、駕かきの一人が、何処からか駈け足で持ってきた竹柄杓の水をごくりと一口飲んでいた。それを、権叔父へ渡して、
「――何を、あわてていなさるぞ。相手は、多寡の知れた鼻たれ小僧、少々ぐらい、剣のつかいようを学んだとて、程が知れておるわいの。気を落ちつけなされ」
――それから。
自分が先に立って、本願堂の階段の前にすすみ、ぺたりと坐りこんだと思うと、懐中から数珠を取り出して、彼方に立っている当の相手の武蔵もよそに――また大勢の環視をよそに――ややしばらく何か口のうちで祷っていた。