Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
梯子を降りて階下へ逃げてしまう。
若い後家は、
「いけない、いけない」
といいつつ、子供のする振舞なので、怒れもせず、笑いながら追いかけて行ったが、そのまましばらく階下から上がって来ないがと思っていると、やがて城太郎だけが、みしみしと、梯子段をのろく上がって来る様子。
来たら叱ってやろう。――武蔵がそう考えて、上がり口のほうに向って厳しい膝を向けて坐っていると、そこから不意に、
「――ばあア!」
鬼女の笑い仮面が、伸びた体の、先っぽに見えた。
びくっと、武蔵は筋肉をひきしめ、膝がすこし動いたくらいだった。何でそんな衝撃をうけたか、かれにもわからない。――しかしながら薄ぐらい梯子段の口元に手をついている笑い仮面を眺めてすぐ解けた。それは仮面にこもっている名匠の気魄である。白い顎の上から左の耳へかけてきゅっと笑っている三日月形の唇元にただよっている妖美にかくれているものだった。
「さ、おじさん、出かけましょう」
と城太郎はそこでいう。
武蔵は起たず、
「まだお返しせぬか。左様なもの、欲しがってはならん」
「だって、いいといったんだよ、もう、くれたんだよ」
「よいとはいわぬ。