Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
という苦情を言葉でいう遑すらないのだ。
酒に酔った泥鰌のように、彼らは、血にあたまが眩んでしまった。仲間の刃が仲間を撲り、人の顔が、自分の顔みたいに見え、そのくせ敵の武蔵の影は、確と認めることができないため、ふり廻す彼らの刀は、従って、味方同士の危険であるばかりであった。
もっとも武蔵自身もまた、自分が何を行動しているか、一切無自覚であった。ただ彼の生命を構成している肉体の全機能が、その一瞬に、三尺に足らない刀身に凝りかたまって、まだ五歳か六歳の幼少から、きびしい父の手でたたきこまれたものだの、その後、関ヶ原の戦で体験したものだの、また、独り山の中へ入って樹を相手に自得したもの、さらに、諸国をあるいて諸所の道場で理論的にふだん考えていたものだの、およそ今日まで経て来たすべての鍛錬が、意識なく、五体から火花となって発しているに過ぎないのである。――そして、その五体は、蹴ちらす土や草とも同化して、完全に、人間を解脱した風の相となっている。
――死生一如。
どっちへ帰することも頭にない人間のある時の相。
それが、今、白刃のなかを駈けまわっている武蔵の姿だった。