Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
「老師っ、お忘れ物っ」
と、刀の柄をたたいた。
日観は、足を止め、
「忘れ物とは?」
「会い難いこの世の御縁に、せっかくこうしてお目にかかったのです。どうか一手の御指南を」
すると、歯のない彼の口から、からからと枯れた人間の笑い声がひびいた。
「――まだ分らんのか。お前さんに教えることといえば、強過ぎるということしかないよ。だが、その強さを自負してゆくと、お前さんは三十歳までは生きられまい。すでに、今日生命がなかったところだ。そんなことで、自分という人間を、どう持ってゆくんじゃ」
「…………」
「きょうの働きなども、まるでなっておらぬ。若いからまアまアせんないが、強いが兵法などと考えたら大間違い。わしなど、そういう点で、まだ兵法を談じる資格はないのじゃよ。――左様、わしの先輩柳生石舟斎様、そのまた先輩の上泉伊勢守殿――そういう人たちの歩いた通りを、これから、お身もちと、歩いてみるとわかる」
「…………」
武蔵は俯向いていた。ふと、日観の声がしなくなったがと思い、顔を上げてみると、もうその人の影はなかった。
この一国
一
ここは笠置山の中にあるが、笠置村とはいわない。