Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
小茶ちゃんは、壺をかかえて出て行った。
武蔵はふとそこへ置いて行った芍薬の枝の切り口に眼をとめて、小首をかしげた。何が彼の注意をひいたのか、じっと見ていた果てには手をのばし、それを寄せ、その花を見るのではなく、枝の切り口を飽かずに見ている。
「……あら、……あら、あら」
自分でこぼして歩く壺の水に、こう声をかけながら、小茶ちゃんは戻って来て、壺を床の間に置き、無造作に、それへ芍薬を入れてみたが、
「だめだア、旦那はん」
子ども心にも、不自然をさけぶ。
「なるほど、枝が長すぎるな。よし、持ってこい、ちょうどよく切ってやるから」
小茶ちゃんが抜いてくると、
「切ってあげるから、壺へ立てて、そうそう地に咲いているように、立てて持っておいで」
いわれる通り、小茶ちゃんは持っていたが突然、きゃッといって、芍薬を抛り捨て、脅えたように泣きだした。
無理のないことであった。
やさしい花の枝を切るのに武蔵の切り方は余り大げさであった。――それは眼に見えないほど早かったにせよ、いきなり前差の小刀へ手をかけたと思うと、ヤッ――とするどい声と、そして、刀をパチンとその鞘へ納める音と殆ど一緒に白い光が、小茶ちゃんの持っていた手と手のあいだを、通りぬけていたのである。