Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
「沢庵さんのご親切はわかりますけど……」
「そうせい」
思わず手を引っ張って、城太郎へも、
「小僧、おまえも来い」
城太郎はかぶりを振って、
「おら嫌だ。お師匠さまの後を追いかけて行くんだから」
「行くにしても、一度、山荘へもどれ、そして石舟斎さまにごあいさつ申しての」
「そうだ、おら、御城内へ大事な仮面を置いて来た。あれを取りにゆこう」
城太郎は駈けて行ったが、彼の足もとには、有明もない、無明もない。
しかしお通はその二つの岐れ路に立ったままうごかなかった。それからも沢庵がむかしの友達に返って、懇々と、彼女のさしてゆく人生の危険であることと、女性の幸福がそこばかりにないことを説くのであったが、お通の今の心をうごかすには足らなかった。
「あった! あった!」
城太郎は仮面をかぶって、山荘の坂道を駈け降りて来た。沢庵はふとその狂女の仮面をながめて慄然とした。――やがて年月経た無明の彼方にいつか出会うお通の顔を今見せられたように。
「――では沢庵さま」
お通は一歩離れた。
城太郎は、彼女の袂にすがって、
「さ、行こう。サ……早く行こう」
沢庵は、昼の雲に、眸をあげ、おのれの無力を嘆じるように、