Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
動物的な官能と猛気が、泥や露に汚れ果てた全身に漲っていた。
「畜生っ……」
誰にとはなく、こう呪いを呟くと、やり場のない憤りが、ふいに木剣をうならせて、
「えいッ!」
太い生木の幹を、パッと割った。
木の裂け目から白い樹乳がながれた、母の乳を思いだしたか、じっと目を注いでいた。母のいない故郷は、山も河もたださびしかった。
「おれを、この村の者は、なんで目の仇にするんだ。――おれの姿を見れば、すぐ山の関所へ告げ口するし、おれの影を見れば、狼に出会ったようにこそこそ逃げてしまう……」
彼は、この讃甘の山に、きょうで四日も隠れていた。
ひる霞のあなたには、先祖以来の――そして孤独の姉がいる邸が望まれるし、すぐ麓の樹の中には七宝寺の屋根がしずかに沈んで見える――
だが、そのどっちへも、彼は近づき得ないのである。灌仏会の日に、人ごみに紛れて、お通の顔を見に行ったが、お通が、大きな声で自分の名を群衆の中でよんだので、発見されたら、彼女へも禍いがかかるし、自分も、捕まってはならぬと思って、あわてて姿を晦ましてしまった。
晩になって、姉のいる邸へもそっと訪ねて行ったが、折悪く又八の母が来ていた。