Classici giapponesi con furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Leggi 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 335.908 caratteri · 669 schermate
乱れた黒髪ムズと握り
彼女は今や雑沓の中から、一つの思い出をまざまざと、心に思い出しているのであった。木曽川の岩頭巴ヶ淵で、花村甚五衛門の刃にかかって危く非業に死のうとした時、不思議に命を助けられた、岩窟の中の老異人、それを思い出しているのであった。
鳰鳥は恍惚と眼を閉じた。と、はっきりとあの時のことが、幻のように次々に浮かんで来た。
乱れた黒髪ムズと握り
「ほんに私はあの晩に、巴ヶ淵の岩の上で、殺されようとしたのだった」
実際鳰鳥はその晩に花村甚五衛門の刃にかかり屍を晒さなければならなかった。「お前はここで死なねばならぬ」と甚五衛門はこう云って、既に白刃を抜きさえした。余りの意外に鳰鳥は心を動顛させながらも白刃持つ手に取り縋った。
「何咎あってこの私を討ち果たそうとはなされます※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
「お前に咎は何んにもない。美しいのが身の因果じゃ」
「美しいのが因果とは?」鳰鳥は尚も手に縋りこう繰り返して訊いたのであった。
「そちがあんまり美しい故に、わがご主君には毎夜のように藪原あたりまでお通いなさる。殿の夜遊を停どめたさにそちが命を殺めるのじゃ」
甚五衛門はこう云ったが、さすがに声は潤っていた。