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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

冷たい若人

では……たしかに、おあずかりして」

と、貞盛は、匆々に、そこのあばら屋同然な門を辞した。

冷たい若人

その夕べ、師輔に会い、書の手本を、渡した。そして、いつものごとく、和琴を合調せ、灯を見てから、帰ろうとすると、ここに仕えている弟の繁盛が、

「兄上。ちょっと、お顔を……」と、自分の小部屋へまねいて、こういった。

「相馬の小次郎が、都へ来て、右大臣家に仕えていますが、まだ、御存知ありませんか」

「……小次郎か」と、ちょっと、いやな顔をして――「おまえは、会ったのか」

「え。いつぞや、宮門の御輦溜りで、会いました」

「あまり親しくせんほうがいいな」

「なぜですか」

「常陸の父上から、そういって来ている。わしも、一度おまえに、注意しようと思っていたのだが……」

「はて。でも、その父上が、右大臣家へ、添え状を書いて、特に修学させてくれと、御依頼申したのではないのですか」

「修学なんて、あの男に、滑稽な望みだよ。田舎にいたときから、粗野で暴れ※ぼで、人にも、嫌われていた小次郎だ。良持どのの亡いあとは、父上が、あれの大叔父として、あとあと、家のつぶれぬよう、一族や召使の将来も見てあげなければならん立場にある……。