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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「野郎っ、待てっ」
とばかり追ッかけて入った。
すると、泉石見事な庭苑の彼方で、すらと、鶴のような姿の人が立ってこなたを振向いた。髪に紫紐金鳳の兜巾をむすび、裾長い素絹の衣を着し、どこか高士の風がある。
「たれじゃ、何者じゃ」
その涼やかにして射る如き眼光も尋常人とは思われなかった。
「あっ。つい、どなたのお屋敷ともわきまえなく、無断立ち入りましたこと、重々の不埒、どうぞお見のがしを」
膝を折って、朱同は詫びた。われに醒めればこの仕儀は恥かしい。
高士はほがらかに笑った。
「美髯公。あんたはまあ、よほどあの黒助にからかわれなすったの」
「えっ? てまえをご存知でしたか」
「されば、山東の及時雨宋江から手紙をもらっていましたのでな」
「そしていま、黒助と仰っしゃったのは」
「李逵のことですわい。……じつはの、かねて宋江からの密書で、この館の内に、呉用、雷横、黒旋風の三名を泊めてやっておりましたのじゃ」
「あっ、ではここが彼らの旅宿で」
「さよう。あんたには、さまざま解けぬご不審だろうが、すべてはただ、梁山泊の輩が、あんたを山泊の仲間に加えたいという願望から出たことじゃ。