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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

緑林の徒の涙を見て、史進、彼らを再び野へ放つこと

緑林の徒の涙を見て、史進、彼らを再び野へ放つこと

ここの山村は華陰県の県ざかいで史家村とよばれている。戸数三、四百軒すべてが“史”という氏だった。

荘院(庄屋)の太公は、先祖代々、村のたばね役をしていたが、しかし自分もすでに老齢である。一日も早く息子の史進に跡目をゆずッて、隠居したいものと考えている。

そこで、彼はその日、客の教頭王進へ、こんな希望をうちあけた。――かりそめの旅人に過ぎない王進母子へだが、ひとつ伜史進のために、末長く師となって、村に永住してもらえまいかという相談なのだ。

「さあ? ご好意はまことにかたじけないが」

王進は、答えに窮して。

「今は正直に申しますが、じつは拙者は、ただの旅商人などではありません。つい先頃まで、禁軍八十万の師範役をしていたものですが、新任大将軍高と折合いのつかぬことがあって、無断で都門を逃亡し、いわば天下のお尋ね者の身の上です。……せっかくですが、ここにとどまれば、お世話になったご当家へどんな禍いがかからぬ限りもない。それゆえ仰せなれど、その儀は、何ともおひきうけいたしかねる」

「なんのお客人。この年までたくさんな人間を見てきた老人の眼じゃ。