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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
大江の流れは奸人の血祭りを送り、 梁山泊は生還の人にわき返ること
ほかにも五隻の大船の影が迫っている。文炳は狼狽のあまり江の中へ飛び込んだ。とたんに小舟からもしぶきが揚った。浪裏白跳の張順が、歩く大魚みたいな影を水中に描いて、苦もなく文炳を引っ捕え、大船の方へ引きあげていた。
「ざまを見さらせ」
「さあ、みんな寄って来い」
「悪文炳の膾斬りだ。悪運の強い野郎とおもったが、悪運はやっぱり当てにはなるめえ。思い知ったか」
船上は沸いた。血まつり騒ぎだ。
一寸試し五分試しのすえ、江へ投げこまれたのはぜひもない。あげくに、その人間が一代爪に火をともして蓄積した財貨金銀は、昨夜、一物余さず彼の倉から、ここの大船三隻に移されていたのであった。
「さあ、引揚げようぜ。足もとの明るいうちに」
この日も、江州の府城を中心に、官軍の旗や馬けむりが江岸一帯に眺められた。おそらくは大規模な手配がおこなわれているのだろう。都へは使者が馳せ、各州には官符が飛び、梁山泊の名はいまや、全土へ震撼しているにちがいない。
「この上は、てまえたちも、この地には残れません。老父もつれてご一同とともに」
と、穆家の兄弟、三覇の面々、例の薛永や裁縫師の小男までも、こう申し出て、すべて梁山泊落ちときまった。