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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
翠花冠の偽役人、玉座の屏風の 四文字を切抜いて持ち去ること
「どうして」
「だって、現朝廷の腐敗、悪政、その下に泣かされている辺土の民、いまさらでねえが、ひでえものだ。それはみんな天子が悪いからじゃあありませんか」
「いかにも、世の怨嗟はみな天子に帰する。だが」
と宋江は、坐り直した。
「いい機会だから今日は一つみんなにもいおう。たしかにそれは天子のご不徳ではある。けれど宋朝の今上、徽宗皇帝は元来お人のよい公正なおかたなのだ。文雅風流の道に傾きすぎるきらいはあるがまず聖明な君と申しあげてよい。ただ困るのはその君側の奸だ。奸佞な侯公や悪臣のみが政治を自由にしている」
「だから、それの分らねえ盲天子じゃ飾り物じゃありませんか」
「といって、だれを一天の至尊と仰ぐか。ともあれ宋朝の御代はこんにちまで連綿と数世紀この国の文明を開拓してきた。その力はじつに大きい。しかるにもしその帝統がここで絶えるようなことにでもなったら、それこそ全土は支離滅裂な大乱となり、四民のくるしみは、とうてい、今のようなものではなかろう……。いや、もっと心配なことさえある」
宋江のことばには、ようやく、国を思う熱意のほとばしりと憂いとに荘重なひびきをおび、彼をのぞく百七人の、耳をすまし心を打たずにおかなかった。