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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
木乃伊取り木乃伊となり、勅使の大臣は質に取られる事
ところが、この玉嬌枝をチラと見染めて、理不尽にも、妾に出せといって来た者がある。しかもそれが官憲だった。
父娘が泣いてあやまると、ついに一夜、暴力のあらしが娘の悲鳴をつつんで手の届かぬ所へ遠く攫ッて行ってしまった。何者かといえば、華州第一の覇権者“賀”という奉行がその当人だった。――たまたま、華山の霊地に詣でた賀が、ふと、玉嬌枝を見そめて「……なんでも、ぜひ、わがものに」と、その淫欲と暴とを逞しゅうしたものだった。
史進はこれを聞いて、義憤やるかたなく、
「よし、おれが懸合って、娘をとりかえして来てやる……」と、ただ一人、県城の奉行所へ出向いて行った。――が、それきり彼も、山へ帰って来ない。今日でもう十日にもなるが何の音沙汰もないのを見れば……その一命も気づかわれる……という三頭目が逐一な話なのだった。
「ふウ……む!」
ひとたび、花和尚がこう呻ると、たちまちその満面も、背の文身の緋桜のようになる。
「おい、聞いたか武松」
「聞いた。ひどい奉行もあるもんだな」
「わが輩がもっとも憎むべき奴としている代物だ。よしッ。行って来るからな。貴公は山泊との連絡もあること。