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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
世路は似たり、人生の起伏と。 流刑の道にも侠大尽の門もある事
……ただしだぞ、林冲を殺したという証拠には、彼の顔から金印(いれずみ)の皮膚をはがし、それを証拠に持ち帰れよ。よろしいか。さあ合点がついたら、元気をだして大いに飲め。――そしてそれなる銀子二十両は、当座の手付け金として渡しておくから収めておくがいい」
賄賂は彼ら端役人の端公には、日ごろも収入に数えている常習のものだが、こんどのことは相手も違うし、ケタも違う。一生涯の運のつかみどころかとも思われた。
そこで、陸謙と別れた翌朝、彼ら端公二人は、またも片手に水火棍(三尺の警棒)をひッ提げ、林冲の背をしッぱだき、しッぱだき、峨々たる山影の遠き滄州の長途へ、いよいよ腹をきめて立っていった。
世路は似たり、人生の起伏と。
流刑の道にも侠大尽の門もある事
俗に、滄州までの道は二千里(一里ヲ六町ノ支那里)といわれている。
道々は難所折所。護送役の端公(獄役人)二人は、毎日林冲の縄ジリをとって追いたてながら、
「さて、どこでこいつを殺したもんだろう。ただの囚人なら雑作もねえが、なにしろ禁軍八十万の師範だ。いくら首枷がはめてあるからって、もしやり損なったらこっちの首がすぐ失くなる」