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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

名馬の盗難が機縁となって三山の怪雄どもを一つにする事

た。しかし、げにもこれはおかしな奇現象で、官はわざわざ、この賊巣へ遠くから、武器、武人、糧を送って、その驕りをいよいよ誇らすような結果をみてしまったわけである。

×         ×

さて、一方はかの敗軍の将、呼延灼。

いまさら、都へも帰れない。

麾下三軍の兵は、めどを失い、散々逃げ帰りもしたろうが、彼とすれば「何でおめおめ、この面さげて都へ」という感慨だろう。

落武者のみじめを沁々身に味わいながら、あてどもなく、二日ほど落ちて行ったが、

「待てよ。このまま山野に隠れて、郷士となり終るのも智恵がない」

と、そこで、一ト思案に行きついた。

「――青州の奉行、慕蓉氏には、かつて一面識がある。あちらは慕蓉貴妃のお血すじだ、ひとつ朝へおとりなしを願って、もういちど、雪辱の軍をなんとかしていただこう。そうだ。再起の工夫、望みなきにもあらずだ……」

気もちにゆとりを生じると、急に、身心の疲れや空腹をおぼえだした。それにもう黄昏れ頃。見れば路傍に一軒の田舎酒屋がある。

「亭主。今夜は泊めてくれい」

「だんな、うちは宿屋じゃございませぬ」

「わかっておる。どこでもいい。