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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
教頭の王進、追捕をのがれ、母と千里の旅に落ちゆく事
、第4水準2-1-50)へ重任を命ぜられたものではある。しかるに、出頭の簿へ名をのぼせながら、今日の馬揃えに、姿を見せぬやつがおるとは奇ッ怪千万。そも何者だ、そやつは」
「禁林軍の教頭王進にござりまする」
「兵の師範たる職とあっては、なおゆるし難い。ただちにその者を召捕ってこい」
「いや、王師範は、日頃とて、決して懶惰ではございません。数日前から、何か病中にあるよしで」
「だまれっ。武将たる身が、いささかの病などに、大事な一日を欠くことがあろうか。もしこれが、まことの出陣だったらどうする。察するに、この高※(「にんべん+求」、第4水準2-1-50)の就任をよろこばぬものか、あるいは軍命をかろんじておるものに相違ない。――すぐ行けっ。折りもよし、軍紀振粛の要もある」
高※(「にんべん+求」、第4水準2-1-50)は、こう激語して、馬蹄を蹴らせた。そしてすぐ副官や随身将校の騎馬をしたがえて、次の巡閲に移っていた。
教頭の王進、追捕をのがれ、母と千里の旅に落ちゆく事
棒鎗術の名人として、王進の名は遠近に高い。
父王昇の代から都軍に仕官し、兵へ武芸を教え、家は城下の一隅にあって、ただ一人の母とともに、何事もなく暮していた。