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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
関の番卒といい、牢営内の役人までも、柴進の家の者と聞けば、疑いもしない。
それとこの両三日は、城外城内、ひと通りな騒ぎでなかった。牢営長官の愛児が、盂蘭盆会の夜、地蔵寺の池で溺れ死んだ。そして傅役の朱同が当夜からいなくなったという、それの詮議や家ごとの町調べだった。
しかし、こういう捜査の手すら、柴家の内へは決して臨んで来ることはない。治外法権の門といったかたちである。かくてはや四、五十日はいつか過ぎた。その或る日のことだった。――どこから来た使いやら飛脚やら、秋、静かなここの門へ、一封の書がとどけられた。
「大旦那さま。ただ今、高唐州からこんなお手紙でございますよ」
あわただしく、侍女はそれをすぐ、柴進の室へ持って来た。
「おや、火急とある」
柴進は、封を切った。読みゆくうちに、やや手がふるえてみえる。何かよほどな大事でも起ったらしい。
「柴の旦那え。……もし大旦那」
「あ、李逵。そこにいたのか」
「おいいつけで、外から窓框の拭き掃除をしておりやしたが、何か、えらいこッても持ち上がったんでございますか」
「むむ……ちとなア。……だが、おまえに話してみたところで仕方がない」