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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「ははあ、ここはもう、上清観中の奥処だな」

「さようで。いちばん奥の古刹でございまする」

「あれなる石壁に、鉄鎖をもって、物々しい錠前をかけてある門が見えるが、あれは何だ?」

「開かずの祠と申しつたえております」

「開かずの門か」と、洪はずかずか歩き出した。なにか、抵抗を感じたらしく見える。仰げば大絶壁。そこの裾をくりぬいた石窟なのだ。近づいてみると、かたわらの石柱には、

伏魔之殿

と、四文字が彫られてある。

「おうっ、宮司。――開けて見せてくれい、この内を」

洪は、伏魔と読み、また、不開の門と聞いて、たちまちその傲上慢を、むらむらと、胸に煽りたてられたらしい。

「め、滅相もない仰せを」

宮司や道衆は、青くなった。

彼らが、口をそろえていうには、

「――そもそも、ここに祠られて、咒封となっている魔ものは、ことごとく、世界の妖霊どものみで、ございまする。仔細を申せば、大唐の開山洞玄国師このかた、代々の老祖大仙が、魔ものを捕りおさえては、この石窟へ封じ込めおかれたもので、みだりに開くことはなりません」

「はははは。ばかなことを」

「いやいや、お笑い沙汰ではございませぬ。