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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「ヘエ、その男なら、昼、ここで休んで飯を三人前も食って行きなすったが」
「どっちへ」
「たしか東の方で」
徐寧は聞くやいな、先に立って。
「隆さん、急ごう!」
湯隆も思うツボと歩きにかかる。やがて宵のくち。白い丸印をまた見かけた。徐寧が夜道をかけてもというのを、まあまあと、ここで旅装を解いて一泊とする。――そして翌朝の立ちぎわ、あいさつに出て来た女将をつかまえて、湯隆がまた訊ねた。
「一見、人相のよくねえ男が、朱革の櫃をかついで、きのうこの辺を通らなかったかね」
「あらまあ、だんなさま、その人なら」
「どうしたと?」
「暗いうちに、宅を早立ちして行きましたよ」
「えっ、ここに泊っていたのか」
徐寧は地だんだ踏んだ。しかしその日の街道では、何も聞き知るところはなかった。湯隆も丸印を見なかったのである。
だが、次の日は、しばしば見かけた。そのたび湯隆は連れを誘って茶店へかける。すると何となく手がかりも聞く。――けれどそれが、いつも半日かわずか二タ刻遅れだった。かくてついつい幾日かを釣られて歩き、徐寧はいやが上にも、焦ついていた。
「ええ、くそいまいましい。今日ではや七日目。