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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
にもかかわらず、日々あれへ出て恥もしらぬ悪口雑言を吐いている様、どうにもはや、我慢がならぬ」
「わかりました。あの賊の二将の首を取ッて来いとの御意ですな」
「そうだ。いちどは敗れたりといえ、禁軍三万の上に指揮をとっていたあなただ。賊将の首二ツぐらい慕蓉の前に供えられぬことはあるまい」
こういわれては、呼延灼たる者、なんで否まれようや、である。精兵八百をひきつれて、城の一門から敵中へ突進して行った。
けれど秦明、花栄は、
「それっ、おいでなすッた!」
と、これは思うつぼの様子だった。決してあわてないし、また驚かない。巧みに陣を開き、また旋回し、チラチラ、自分たちの姿をそのあいだに見せながら、次第に遠くへ退いて行った。
「卑怯っ、卑怯!」
追っかけ追っかけ、呼延灼はつい深入りしてしまった。あげくに、陥し坑へ落ちこみ、搦め捕られて、やがて、宋江のいる本陣へ、大熊みたいに、曳きずられて行ったのだった。
すでに伝令で知っていた宋江は、それを見ると、気の立っている大勢の手下を叱った。
「手荒にするなっ。縄を解け。――縄を解いて、わしに預けろ」
さらに、宋江は、その呼延灼の手をとって、幕舎の内に入れ、しかも礼を執って、こう慰めたものである。