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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

城内の街々はまだ余燼濛々の騒ぎである。――だが早くも、街角には、宋江が立てさせた“撫民ノ制札”が見られ、一部では城壁の消火につとめ、また一隊の泊兵は、罹災民を他にまとめて、それには米や衣服やかねを見舞にめぐんでやっている。

役署の穀倉は開かれ、奪いとった金や衣は山をなし、良馬二百余頭も、一ヵ所につなぎ出された。宋江はこれの半分を梁山泊へ輸送させ、

「あとは窮民に領けてやれ」

と、土地の長老五人をえらんで、その者たちに処理を托した。――そして、即日、

「長居はまずい。梁山泊へ」

と、すぐ全軍を青州から引き揚げにかからせたが、その途すがらも、秋毫犯すことない徳風を慕って、郷村の老幼男女は、みな道にならび、香を焚き、花を投げて、歓呼した。

「……ああ、うそではない」

呼延灼は心中、つくづく、途上で感じていた――。

「かつては自分も、禁軍三万をひきつれて、征途のみちを、こうして行軍したものだが、まだいちども田野の郷民が、こんなに王軍へ歓呼するような景色に出会ったことはない……。これがまことの野の声というものか」と。

さらに彼は、梁山泊でも驚いた。

その規模の大は、さきに彼が攻めあぐねた時から分っていたが、内部の秩序、また宛子城の大会議に集まった漢どもの、いずれも一トかどな面だましいに、今さらの如く、ひそかな舌を巻いた