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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

と、陳達が答えた。

「獄中のままいのちだけは、延ばされているんじゃないかと思われます」

「どうして、それが保証できる」

「五日ほど前、都へ向って、奉行の急使が立って行きました。ですから二人の身の処分は、朝廷のさしずを待って、おこなわれるものに相違ございませぬ」

「――軍師」

と、宋江はまた、呉用にむかって。

「何か、よいお手策がありましょうか。ともあれ、二人のいのちは、命旦夕と思わねばなりませんが」

「ま――お急ぎあるな。いちど城下へ出て、とにかく、城中の雲気を篤と窺ッてからのことですよ」

呉用は、一小隊をべつに編制して、宋江と共に、その夜から翌夕にかけ、華州の城下へといそぎだした。そして城下の小高い所に立ち、折ふし時も二月の月夜、月下の城と、城のうしろ、山波の彼方まで、昼かのような、西岳華山のながめにしばし佇んだ。

空には片雲の影もない。地に光るのは水であろう。それは濠をなして、華陰城の城壁の下を稲妻形にめぐッている。

その不落をほこる城楼も巍峨たる姿だが、さすが霊山の華岳はもっと神々しい。仙掌ノ峰、雲台ノ観。斧をならべたような石峰。李龍眠の墨の画筆で“月夜山水図”を宇宙へ一ト刷きしたような景である。