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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

と、やにわに勅使船のみよしをさえぎった。

「や、や、や?」

と官船の上では、騒ぎ立った銀帯金剣、それに紫の短い陣羽織を着た宮廷武官の面々が、二十余名、一せいに、勅使旗の下へ走り出て来て、ののしッた。

「こらッ、なんじらには、この御旗が目に入らんのか」

「おそれ多くも、内殿司の大臣宿元景さまがお座船の水路をば」

「さまたげなすと、ただはおかんぞ」

「推参な下種どもめが、目ざわりだわ。とッとと船を遠くへ避けい!」

いわせるだけいわせておいて、呉用は苦笑をうかべたが、さりとて、慇懃な態度ではあった。

「あいや、お騒ぎ立ちは、なんのご利益にもなりますまい。――これは梁山泊の義士宋江です。義士宋江が折入って、御見を得に参った次第ですから」

「げッ? ……」と、一せいに白み渡って「梁山泊の輩だと! して、きさまがその宋江」

「いえ、宋江はこちらの御仁です。てまえは、おなじく梁山泊の一員、呉学究なので」

「しゃッ。白昼は歩けぬやつらが、首を揃えて何しにここへ」

宋江が、次をうけて、言った――

「お願いのためにです。宿大臣閣下に、暫時、ご上陸いただきましょうか」

「ばかなッ。わが大臣閣下が、なんじらごとき草賊に親しくお会いになるものか」