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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
なんのことはない、その泣き言を訴えにここへ馳け込んで来たようなものだった。
――訊けば、事情はこうなのだ。
※(「さんずい+(冢-冖)」、第3水準1-86-80)州は金国(旧、満州国)の境に近い。そこに鎗竿嶺ノ牧がある。
牧には、大金国の王子のお召料で、
昭夜ノ玉の獅子馬
と名のある雪白の優駿が放牧されていた。金毛犬の段は、これが欲しくてたまらない。それを盗んで土産に持ってゆけば、かならず梁山泊への仲間入りができるにちがいないと、かねがね出奔の望みを持っていたからだ。
そしてついに彼はそれに成功した。――盗んだ名馬の脚にものをいわせ、やがて凌州の西南、曾頭市までやって来た。
するとここに市の長者で“曾家の五虎”と呼ばれる五人兄弟がある。段はその輩に因縁をつけられて、せっかくな馬を途中で奪られてしまった。無念、なんとも業腹でたまらない。――どうか奴らを懲らして、稀代な名馬白獅子をお取り返しなすッて下さい。「――お願いの筋はそれなんで」と、金毛犬の段は、百拝した。
始終を聞き終った総統の晁蓋は「こいつ、どこか見どころがある」と宋江や呉用に諮って、ひとまず段の身柄は泊中にとめておいた。