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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「待てっ、聟どの。逃げるとは薄情な」と裏手の桃林へと追ッかけた。

周通は柳の木につないであった馬を解くやいな、柳の枝をムチにして一散に逃げだした。智深もまた、手下の馬の一頭に跳び乗って追ッかけていく。――それはいいが、さあ、劉家の後の騒動といったらない。

残された手下どもは、変だと知って、劉老人を縛りあげ、これを曳いて、翌朝、桃花山の匪賊の木戸へ帰ってきた。

ところが、なんぞはからん、そこでは、賊の頭目と魯智深とが、仲よく笑いながら酒酌みかわしている。そしてまた、昨夜の押しかけ聟――すなわち頭目の弟分の周通は、悄れ返って、そのそばで首うなだれている始末ではないか。

「やあ、劉じいさん、可哀そうに、捕まってきたのかい。おい花聟、早く縄を解いてあげろ」

魯智深はげらげら笑って、仔細を話した。

昨夜、相手を追いつめて、この木戸まできてみると。弟分の助太刀に出てきた頭目というやつは、なんと、渭水の街の膏薬売り――あの打虎将ノ李忠であった。

「……ばかなやつらだ、こんなところでケチな山賊などしてやがって。まだ、膏薬売りのほうが、どれほどましな商売か知れめえに」