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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
おれの危なくなった刹那に、戦を止めさせたのは、なんのつもりか?」
その魂胆が気になって仕方がない。だが解けなかった。で、とうとう部下に命じて、かねて捕虜の檻車へ放り込んでいた囚人の張横と阮小七とを引っぱり出させ、宋江の人となりを問いただしてみた。
ふたりとも、口を揃えて、憚るなく、宋江の人間を称えた。
「いま頃まだ、及時雨の宋公明を、知らねえなんざ、よくよくお前さんは、世事の盲か、軍人なら軍人のもぐりだろうぜ。山東、河北では、三ツ子ですらが知ってらあ。義にあつく、お情けぶかく、だれにも慕われなさる人民の中の光明みたいなお人としてだ」
関勝は、かえって、なにか辱じてしまった。つまらない糺問をしたとは思いながら怏々と、こころも愉しまず、幕舎を出て、独り寒月を仰いでいた。すると――
「将軍、ここにおいでですか」
「歩哨兵か。なんだ」
「ただいま、賊将にしては、いやしからぬ人品の者が」
「なに、敵中から」
「はっ。抜け出して来たものらしく、ひそかに、関元帥にお目にかかりたいといって来ましたが」
「ひとりか」
「はっ。ただ一騎で」
「ふうん……? ま、連れて来てみろ」
密々、この夜、彼をここへ訪ねて来たのは、呼延灼であった。