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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
と、熱に憑かれた男女の群れが、社火行列の仮装とも一つになって、北京全市の辻々に狂舞の袖と輪を描き、いよいよ、爆発的な本能図絵に地を染めていた。
すると、踊りの輪をツイと抜け出した若衆姿のひとりが、道ばたで籠を仕舞いかけていた物売り男の背を一つポンと叩いて耳もとへささやいた。
「青面獣。そろそろ、行くかね」
「あ。花栄か」
「叱ッ。廂官がこっちへ来た」
ふたりは、籠を抱えて、飛燕のごとく、たちまち、人波の中へ消え込んで行った。
すると、ふいに、
「御用だ」
と、そのうしろへ、追ッかけて来た者がある。
「ええ、びっくりした。蚤の時遷じゃねえか」
「ははは。楊雄もあすこにいるぜ」
「みんな俺について来い」
と花栄は言って、また先へ走り出した。
時を一つにして、銅仏寺の前では、雲水姿の花和尚魯智深と、行者武松が、人待ち顔にたたずんでいた。
そこへ、乞食すがたに身を窶した劉唐だの、飴売りの王矮虎だの、また、小粋な茶屋女に化けた一丈青と、顧のおばさん。さらにお上りさんに変装した鄒淵、鄒潤。ほか十人以上もの人影がいつのまにか集まって、これもほどなく、夕闇まぎれ、どこへともなく消え去った――。