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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「やあ、宋先生か。東平府の方は」

「はや、かたづきました。ところで、ここの戦は?」

「ごらんの如く、東昌府は、すっかり捏ね損なッてしまった形だ。序戦に二度も失策をかさね、あげくに、おそろしい傑物がいた」

「傑物が」

「もと彰徳府にいた虎騎隊の指揮官で、あだ名を没羽箭といい、苗字が張、名は清」

「ああそれは有名な軍人です」

「しかも、部下には中箭虎の丁得孫。花項虎の旺などという猛者もいて、あたるべからざる勢い。……しかしきのう、巧々と陥穽におびき込んで、その二人だけは生け捕ったが、なおまだ、かんじんな張清のほうは、あれあのように、戦塵漠々と乱軍の中を馳け廻って味方をなやまし、ほとんど、彼の前に立つ者はない」

「ひとつ、見たいものですな、どういう男か」

「いや、それよりも、敵はまだ、ここへあなたの援軍が加わったとは知らぬようだ。すぐさま、新手を間道から敵の後方へ廻していただきたいが」

「こころえた」

と、宋江はただちに、部下の花栄、史進、林冲、一丈青、解珍、解宝らの麾下あらましを、敵のうしろへ潜行させた。

一夜は明け、ふたたび、曠野は戦塵と鬨の声で埋まッた。

が、その凄烈さは、前日の比ではない。