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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
燕青の箏にあわせ、この夜めずらしく大酔した宋江が、こう自作の即興を歌ったのであった。
すると、宴の末席のほうにいた武松、李逵などが、突として、宋江の歌にたいして、野蛮な憤懣をぶちまけた。
「ちぇッ、くそおもしろくもねえ。また宋司令の天子さま礼讃が始まったよ。いったい、詔だの、お招きだのと、何を待とうッていう寝言なのか」
「そうだとも、武松兄哥のいう通りだ。おれっちは根っからの野育ち野郎。そんなものには、縁もゆかりも持ッちゃあいねえや。へん、おもしろくもねえ! 誰か、陽気な唄でもうたえよ!」
俄然、せっかくな菊花の会は、白け渡った。
翠花冠の偽役人、玉座の屏風の
四文字を切抜いて持ち去ること
「武松、もののわかっている君までが」と、宋江は菊見の杯を下において――「李逵と一しょになって“大義”の何であるかも解さないとは余りに情けないことではないか。ああ、じつに困ったものだ」
と、暗い顔をして心から嘆いた。
「いや、宋司令」と、魯智深はその横から「たれも天子を馬鹿にはしていませんが、しかし、天子のお招きなどをあてにしている奴はこの梁山泊にはいますまいぜ。李逵や武松の悪態はお耳ざわりかもしれねえが、また、むりでないところもある」