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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「燕青、李逵はおまえがあとから引っ張って来い。ぐずぐずしていると、東華門の脱出もむずかしい」
事実、城門は諸所で閉めかけられていた。宋江の身を案じて、史進、穆弘は血まなこで探しており、朱同と劉唐とは、例の旅籠で待っていた。なにしろ一刻もはやく、城外遠くへ逃げるしかない。
ところが、高の兵は、すでに八道の関門から街道の旅籠旅籠の詮議にまで手をまわしており、宋江はいくたびか逃げ道を失った。で、ぜひなく裏街道の陳留県へ道をかえてくると、はからずも、
「宋司令、お迎えに来ました」
という梁山泊からの味方に出合った。
山の五虎ノ将――関勝、林冲、呼延灼、董平など――の一軍で、どうせこんなことも起ろうかと、軍師呉用が、変を見越して、かくは差し向けてよこしたものだという。
「やれやれ、せっかくな都さぐりも……」
宋江は大いに悔やんだ。しかし、あとの魯智深や武松なども、やがてみな、虎口をのがれて、無事に揃って山へ帰り得ただけでも見つけものと思わなければならなかった。
「何事も時が熟さぬうちは成り難い。自然、深く慎んでいれば、やがて天子のみゆるしと招安の沙汰もあるだろう」