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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

あッ――と退くまもおそし、足くびはやけただれ、彼は足くびを抱えて、悶絶せんばかり転がった。

「てへッ、なんでえ、大げさな」

端公二人は、見向きもしない。彼らは、木賃の定例どおり、例の自炊にとりかかり、寝酒を飲んではしゃぎ合った。もちろん林冲へも馬の飼料でもくれるように木鉢に盛った黄粱飯が、首カセの前に置かれはしたが……。

けれど火傷のくるしさ、食欲も出ず、夜すがら彼は眠れもしなかった。あげくに、翌朝は新しい草鞋を穿かせられたので、数里も行くと、草鞋の緒は血にまみれ、乾いた血と土とが、終日、足の皮膚を破った。

「おいおい林師範。どうしたんだい。そんな足つきじゃ滄州までは半年もかかっちまうぜ。早く歩けよ、早くよ」

「むむ、どうにも歩けぬ。これでもあぶら汗なのだ」

「なに、歩けねえと」

薛が、水火棍(獄卒棒)を振り上げるのを、董は止めて、

「まあまあ、そう短気を起すなよ。そのうち足も癒るだろう。さあ、歩いたり歩いたり」

棒の先で、軽く林冲の背や腰を小突いてゆく。撲られるより、このほうがはるか辛い。

それから三日目。有名な野猪林という原始林へかかった。夜ごとの睡眠不足と疲労に、さしもの林冲も、折々、立ち居眠りをもよおすらしく、混沌とよろめいていた。