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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
氷雪の苦役も九死に一生を得、 獄関一路、梁山泊へ通じること
明白なのは、腕を折られた洪先生が、地にヘタ這っていた姿だけである。
「いや、さすがさすが。聞きしにまさる見事さではある。かかる技をお持ちしていながら、牢城の苦役につかれねばならぬとは、さても何たる運命のいたずらか」
柴進はひとしお同情を深めたらしい。――次の日、彼が立つ折には、日ごろ親しくつきあっている滄州の長官、牢城の管営(獄営奉行)、また差撥(牢番頭)などへ宛てて、それぞれ添書を書いた上、大銀二十五両二封をも、あわせ贈って、
「まあ、おからだを大事に勤めてください。いずれ冬着も届けさせましょう」
と、力づけた。さらに、また、二人の若者を付けて、牢城門外まで送らせるという親切気のかぎりであった。
氷雪の苦役も九死に一生を得、
獄関一路、梁山泊へ通じること
「……ああ、ここが以前からよく、この世の外のように聞いていた滄州牢城の大苦役地か」
死者の肌を思わす凍てきッた大陸の線。飛んでゆく鴻の影も、それの生きていることが、不思議に見える。
「こんなところで、苦役につこうとは」
林冲は、いくたびも憮然とした。
それにしても、柴進の添書や銀が、ここでは、どんなにものをいったかしれない。