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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「ほ、ほう……。凄い大男ですな」
と、わざと目をみはって呟いた。
――この時、と合点したらしく、縄付の男は、不意に大声で呼びたてた。
「あっ、おじさんだッ。おじさん、助けてください」
「な、なんだって?」
晁蓋は、わざと怪訝な顔してから、ややしばらく、じっと相手を見すまして。
「や、や。おまえは王小三じゃないのか」
「そ、そうですよ、叔父さん。……ああ、叔父さんは、それでも、この小三を、覚えていてくれたんですね」
びっくりしたのは捕手たちである。わけて、雷横は、ぎょッとした。
「えっ、甥御ですか、この男は……。はアて、こんな股旅者が」
「なんともはや、面目もありません。恥をいやあ、てまえの姉夫婦の子です。これがまだ六ツ七ツの洟タレごろに、夫婦とも南京へ夜逃げしたきり音沙汰なし。その後、この小三の奴ア、いたずらして頭に大火傷をこさえ、それが十四、五のころで、親とともに一時は村へ舞い戻っていましたが、都の風に染んだ怠け者、またすぐ出ていってしまいました。……以来、姉夫婦も不運つづきで、赤痣の小せがれは、やくざに誘われて、家にも居つかず、親不孝を売り歩いているたア薄々聞いていましたが、まさか、雷横さまのお縄を頂戴しようとは」