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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

雷横もいうまではなく、官の与力、估券にかかわる。

「学人。ほうッといてください。用捨はならん」

「盗賊ですか。この男は」

「いや、荘院の甥ッ子とかだが」

劉唐が、横から吠えた。

「盗ッ人でもねえ俺を、盗ッ人と間違えて、縄をかけやがッた凡くら与力だ、そいつは」

「まだ吐ざくか」

「いうとも、詫び状よこせ」

「うぬっ。もいちど、縄目を見たいのか」

ばッと、両人の踵が、砂を蹴って、またもや、と見えた一刹那、どこかで、

「ばか者っ、なにをしている!」

と晁蓋の声がした。

息せき切って、あとからここへ馳けつけてきた彼は、馬の背から飛び降りるやいな、二人を割って、まず雷横にあやまった。

「どうも、はや、とんでもねえ奴です。お腹立ちでもございましょうが、どうかご勘弁なすって下さい」

そしてまた、劉唐の肩を、一つ突き飛ばして、

「この酒食らい野郎め、ちょっとの間に、もう酒をくらった揚句、なにを考えて、飛び出したかと思えば」

いきなり、彼の手から、野太刀をひッたくって、刀背打ちに撲りかけた。驚いて、その手もとを抑え、

「あっ。そうまあ、ご立腹なさらずとも」

と、止めたのは呉学人である。