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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
……もとより、文字はない男たちだが、その義心と武には、わしも見込んでいた者だ。会わぬこともう両三年になるが、よも、わしのことは忘れてはおるまい」
「ああ、阮の三兄弟でしたら、薄々、噂には聞いていました。石碣村といやあ、わずか二日道、使いをやって、ひとつこれへ呼んでみましょうか」
「来るものか、あの兄弟たちが。この呉用が出向いて、相談をもちかけても、よほど三寸不爛のこの舌で口説かぬことには」
「なるほど。それほどな男とあれば、なお頼もしい。先生、お出かけくださいますか」
「行ってもよい。……が、学童らの授業休みの貼り紙に、もいちど、日延べを書いて来ねばならぬ」
「今夜立っても、明後日の午には着きます。その前に、赤馬も加えて、一杯さしあげたいし、その上でのご出立でも」
「おおそうしよう。さてさて、人生の朝暮、なにが起るか知れんものだな」
彼は一度、童塾へ帰って行き、夕方からまた見えた。そのときは、赤馬の劉唐も同席し、詳しい話は、もうあるじの晁蓋から聞いている容子だった。
三人は、二更の頃まで、飲んでいた。――時々、声がひそまるのは、密議らしい。北京から東京への道すじを、例の時価十万貫の生辰綱(誕生祝いの荷梱)が行くとすれば、その通路は、どの辺に当るか? 去年と道すじを変えるか否か?