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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「それがサ」と、長兄の阮小二は、ちょっと自分の頭を叩いて――「目方十四、五斤の金鯉を十尾ほど揃えてくれと仰ッしゃるんだが……近ごろの漁場じゃ、おいそれとは、とれそうもねえや。……でも、先生の知人のお大尽が、婚礼に使うんだから是非にと、先生も頼まれちゃったというんだよ。弱ッたもんだな」

「ふウむ、そいつはご難題だぞ。……が、まアいいや、先生、もひとつ、いかがです」

「もうだいぶ酩酊ぎみだよ。日も靉靆と暮れかかるし、心気は朦朧だ」

「先生、とにかく今夜は、汚い小屋じゃございますが、てまえどもの家へお泊りくださいませんか。ここの一杯屋も、晩まではやっておりませんので」

「おう、ご厄介だが、世話になるよ。とにかく十尾の金鯉を持たなければ、友人のてまえ帰れんからのう」

これは口実、呉学人の思う金鯉とは、もとより金色の鱗をもった魚なのではない。兄弟三人を網中の獲物として、首尾よく、晁蓋一味の大仕事の味方にひき入れて帰ることだったが――しかし、その真実を言いだすのは、場所もまずい、と考えて、

「じゃあ、ぼつぼつ立とうか。おいよ。旗亭の亭主、勘定をしてくれい」

「とんでもない、先生に金をつかわせるなンて……。