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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

そしてこの頃から、名も、高とあらためた。毬の毛偏をとって、偏のに代えたのである。

そのうち、ある年のこと。――当主、王馬の誕生祝いとあって、ここの亭館には、華麗な車駕が門に市をなした。花の楼台には、楽手や歌姫がならび、玻璃銀盤の卓には、珍味が盛り飾られて、朝野の貴紳があらゆる盛装を競ッていた。中でも、一きわ目につく貴公子は、どういう身分のお人なのか、

「九ノ宮、九ノ宮」

と、宴の上座にあがめられた。そして王大将の家族や来賓の男女から、下へもおかぬ侍きをうけつつ、琥珀のさかずきに紫府の名酒が注がれるたび、しきりに、酔をすすめられている様子だった。

その上、この君の眉目の麗しさは、金瓶の花も、玉盤の仙桃の匂いも、色を失うほどであった。だから、やがてのこと。教坊府の妓女たちが、演舞の余興をすまし終ると、たちまち、彼女らの紅裙翠袖は、この貴公子のまわりへ争って寄りたかり、

「ま、端王さま。いつになく、お澄ましでいらっしゃいますこと」

「今日はご主客でしょうが、なにもそんなにまで、よそ行き顔をなさらないでも、およろしいでしょう。もすこし、お過ごしあそばしませな」