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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「――当村の名主晁氏のお名は、久しく耳にするのみで、御見は今が初めてだが、初対面の手みやげに、じつは軽少なれど、金銀十万貫に値する儲け仕事を持参いたした。なんとお受けとりたまわるまいか」
聞くと、晁蓋はつい笑いだした。
「そいつあ、北方から都へ行く生辰綱(誕生祝いの荷)じゃございませんか」
「あっ――?」
愕然と、一清道人は、相手の顔を、穴のあくほど見まもって、
「ふしぎだ。誰知るはずもないものを、どうして晁どのには、ご存知なのか」
「はははは。なにをいわっしゃる、こっちがびっくりしましたわい」
「それはまた、どうしてです」
「だって、当てずッぽうに、出たらめをいってみたまでですよ」
「いや、それこそ神感と申すもの。あなたは受けなくてはいけません。取るべきを取らずんば何とやら、しかも、密送の生辰綱は、不義の財だ、なんで、奪うに憚りがありましょうや」
こう、説き伏せんとして、一清道人がその弁をふるいかけたときだ。突如、扉を排して顔を現わした者が、いきなり彼の頭へ大喝をくらわせた。
「不敵な密談、みな聞いたぞっ」
「やっ?」
せつな、一清道人は、さッと椅子を跳び離れたが、とたんに、晁蓋とそこへ入ってきた呉用学人とが、声を合せて、哄笑していた。